事業計画や提案のスライドを生成AIに読ませると、改善点はいくらでも出てきます。問題は、出てきた指摘が、そのままでは直すのに使えないことです。
この記事では、AIに任せられる部分と人が判断する部分の分け方、そして指摘を「直しやすい形」で受け取る進め方を整理します。
AIにスライドを読ませると、何が見えるか
資料を読み込ませて意見を求めると、次のような点は比較的よく挙がります。自分では気づきにくい種類のものです。
- 話の順序が前後していて、結論にたどり着くまでが長い
- 1枚に情報を詰めすぎていて、何を見ればよいか分からない
- 前半と後半で同じ説明を繰り返している
- 解決策は書かれているが、誰のどんな困りごとかが書かれていない
- 数字は出ているが、どこから来た数字かが分からない
作った本人は内容を分かっているため、抜けに気づきにくくなります。初めて読む人の視点を借りるという意味で、AIは役に立ちます。
AIの指摘だけでは足りないこと
一方、AIの指摘をそのまま採用すると、かえって伝わらなくなることがあります。AIは資料の外側の事情を知らないためです。
- 誰に見せる資料か。審査員、金融機関、取引先では、知りたいことが違う
- その場の持ち時間。5分で話す資料と、配って読んでもらう資料では作りが変わる
- 業界の事情。その分野で当たり前のことと、説明が要ることの線引き
- 実現できるかどうか。体制や資金から見て無理のない計画か
- 数字が正しいか。根拠のある数字かどうかは、資料からは判断できない
つまりAIの指摘は素材であって、結論ではありません。どれを採用し、どれを見送るかは人が決めます。
指摘は「直しやすい形」で受け取る
ここが実務でいちばん差が出ます。
AIに意見を求めると、たいてい長い文章で返ってきます。読めば納得できても、それを自分のスライドのどこに当てはめるのかを、結局は自分で照らし合わせることになります。この作業が重く、読んだだけで終わってしまいがちです。
解決策は単純で、指摘を元のファイルに直接書き込むことです。
- 別紙のレポートにせず、該当するスライドの上にコメントを置く
- 「分かりにくい」ではなく「ここにこの一文を入れる」と、直す形で書く
- 採用しなくてよい指摘は、その旨を添えておく
時間がないときほど、この差は大きくなります。提出期限まで数日しかない場面では、長い指摘書を読み解いて自分のスライドに当てはめ直す余裕がありません。どのスライドの何を直すかが書かれていれば、受け取ったその場で手を動かせます。
スライドを見直す前に決めておくこと
AIに読ませる前に、次を決めておくと指摘の質が上がります。指示と一緒に渡してください。
- 誰に見せるか(審査員、金融機関、取引先、社内)
- 持ち時間と、配布するかどうか
- 見た人に何をしてほしいか(選んでもらう、融資を受ける、次の面談へ進む)
- 絶対に伝えたい一文
この前提を渡さずに「良くしてください」とだけ頼むと、当たり障りのない一般論が返ってきます。
事業計画づくりでAIを使える場面
スライドの見直し以外にも、使いどころがあります。
- アイデアを広げる。1人で考えていると出てこない切り口を並べてもらう
- 構成の下書き。話す順序の案を複数作らせ、人が選ぶ
- 想定問答。審査員や取引先から出そうな質問を挙げさせ、答えを用意する
- 説明の言い換え。専門用語を、知らない人向けに書き換える
いずれも下書きまでです。採用するかどうかと、事実の確認は人が行います。
使うときに気をつけること
事業計画は、外に出ていない情報のかたまりです。読ませる前に確認してください。
- 未公開の取引先名、価格、契約条件、特許申請前の技術情報を含んでいないか
- 使っているサービスで、入力した内容が学習に使われない設定になっているか
- 法人向けプランなど、事業で使う条件が整っているか
- 共同で出す資料の場合、相手方の情報を入れてよいか確認が取れているか
判断がつかない情報は、伏せ字にするか、その部分を外して読ませます。資料全体を渡すことが前提ではありません。
よくある質問
AIに任せれば、資料作りの時間は短くなりますか?
下書きや言い換えは速くなります。ただし、誰に何を伝えるかを決める時間と、事実を確認する時間は残ります。そこを飛ばすと、体裁は整っているのに中身が伝わらない資料になります。
AIの指摘は、どれくらい信じてよいですか?
構成や読みやすさの指摘は参考になります。実現できるか、数字が正しいかの判断はできません。採用するかどうかは人が決めてください。
スライドをそのまま読み込ませてよいですか?
未公開の情報が含まれていないかを先に確認してください。含まれる場合は、その部分を外すか伏せて読ませます。
AIが出した文章を、そのまま資料に載せてよいですか?
そのままは勧めません。自分の言葉になっていないと、質疑で答えられなくなります。下書きとして受け取り、自分の説明に直してください。
何度も作り直したほうがよいですか?
回数より、前提を渡せているかが効きます。誰に見せるか、持ち時間、伝えたい一文を添えて頼み直すほうが、同じ指示を繰り返すより結果が変わります。
まとめ
AIは、初めて読む人の視点を借りるために使えます。ただし指摘は素材であって結論ではありません。採用するかどうか、事実が正しいかは人が決めます。
そして、受け取り方を変えるだけで使いやすさが変わります。長い文章で受け取るのではなく、元のファイルのどこをどう直すかという形にしてください。
株式会社スワークスでは、生成AIを実際の仕事のどこに使えるかを整理するところからご相談いただけます。事業計画や提案資料の見直し、社内での使い方のルールづくりも含めて、続けられる形に整えることを大切にしています。
